〜G3sewingの「会社」として1年を振り返ってみる〜
2025年の終わりにあたり、今年のG3sewingを「会社」として振り返ってみたいと思います。

G3sewingは、小さな家族経営の会社です。
大量生産でもなく、急成長を目指せるような会社でもありません。けれど、続けていくことそのものが簡単ではない会社だと、この一年、あらためて感じさせられました。
G3は88歳。B3は83歳。ふたりとも後期高齢者となりましたが、今も会社の一員として関わってくれています。
今年の10月には、93歳まで現役で活躍してくださっていたおばあちゃまが、東京の息子さんのもとへお引越しされ、長い働きに区切りをつけて退職されました。
高齢の家族と続ける経営という現実
経営という視点で見るなら、年齢や体力、理解力の変化は、避けて通れない現実です。
耳が遠くなり、会話がかみ合わないことが増えました。
仕事の説明をしたつもりでも伝わっていなかったり、複雑な内容が理解しづらくなってきたり。
「これはもう任せられないのではないか」
「ここまでが限界なのではないか」
そんな判断を迫られる場面も増えてきました。
一方で、
仕事を減らすこと、役割を奪うことが、ふたりの張り合いや生きがいを失わせてしまうのではないか、という恐れもありました。
経営としての合理性と、家族としての思い。
その間で揺れ続けながら、今年は「完全に切り離す」のではなく、継続しながら成り立つ仕組みを作ることを選びました。
仕事と休息のバランス時間をつくる
G3は、11月から週に一度だけ、訪問看護サービスを利用しはじめました。
G3の健康を気遣ってB3が終始不安になることも多くなりました。わずかな変化に不安になり、パニックになったり、心配して夜眠れなかったり。
このままでは共倒れになってしまうと考え、訪問看護サービスを利用することで、健康管理をプロに任せ、無理をさせすぎない体制を整えることができました。
体調の良いときには、看護師さんが散歩へ連れ出してくださり、そうでないときには足湯をしてくださり日々の体調の細かい変化を聞き取ってくださり随分と安心感を感じるようになりました。

これは、「仕事を辞めさせた」という判断ではなく、会社として、家族として、持続可能な形を探した結果です。
2020年からの5年間、ただひたすら働き続けてきたふたり。
2025年は、仕事と休息のバランスを取り直す一年でもありました。
不器用でも、続けていく経営
G3sewingの経営は、効率やスピードだけを基準にはできません。
人の変化を受け入れながら、その時々に合った役割やペースを探していく。
それは、とても不器用で、時間のかかる経営です。
それでも、ミシンに向かい、手を動かし続けること。
誰かの暮らしに届くものを、誠実に作り続けること。
その軸だけは、これからも変えずにいたいと思っています。

※G3sewingでは、売上の一部を通して、ささやかながら支援や寄付にもつなげています。
こんな小さな会社でも、世の中の役に立てているという喜びを、商品をご購入くださるみなさんと分かち合えることを、心から嬉しく思います。
経営判断としての学び
今年一年を振り返って、
G3sewingの経営から得た学びを、正直に書き留めておきたいと思います。

- 高齢の家族と続ける経営では、「できる・できない」ではなく
「無理なく続けられるか」を基準に判断する必要がある - 役割を奪うことが、必ずしも優しさではない
同時に、休む仕組みを用意することも経営判断のひとつ - 家族経営だからこそ、感情と合理性を切り離しきれない
それでも、第三者(介護・医療)の力を借りることで視野が広がる - 仕事量を減らすこと=後退ではない
持続可能性を高めるための調整である - 小さな会社は、急がない代わりに
変化に合わせて形を変える自由がある
社会の中に、会社として立つということ
2026年を前に、
もうひとつ、大切なお知らせがあります。
来年、G3sewingは株式会社になります。
これまで個人事業主として運営してきましたが、
今後は法人会社として、責任をもって続けていくための選択です。
売上が急に伸びたからでも、会社を大きくしたいからでもありません。
むしろ、高齢の両親と向き合い、この先も無理なく続けていくために、「個人」ではなく「会社」として社会に立つ必要があると感じたからです。
株式会社になるということは、守られる立場になることではなく、責任を引き受ける立場になることだと思っています。

取引先やお客さまに対して、
より明確な責任を持つこと。
家族経営であっても、
社会の一部として説明できる形を整えること。
それは、簡単な選択ではありませんでした。手続きも、費用も、考えることも増えます。
それでも、「続ける」という選択をするなら、曖昧なままではいられないと感じました。
目立つためではなく、誰かを支配するためでもなく、与えられている場所で、誠実に働き、分かち合い、小さくても確かな働きをすること。
株式会社にすることは、その想いを失わないための「背伸び」ではなく、守るための一歩だと思っています。
形は変わっても、作るペースが急に速くなることはありません。これまでと同じように、家族と話し合いながら、できることを、できる分だけ。
けれど、
G3sewingはこれから、
「誰かの想い」だけで続く場所ではなく、社会の中で責任を持って存在する会社として、一歩を踏み出します。
その歩みを、これまで支えてくださったあなたに、まずお伝えしたいと思いました。
会社名は「株式会社 House of Lydia」(ハウス オブ リディアと読みます)と名付けました。
会社名「House of Lydia」に込めた想い
G3sewingが、これから会社として歩んでいくにあたり、私たちは House of Lydia(ハウス・オブ・リディア) という名前を選びました。
この名前は、聖書に登場するリディアという女性に由来しています。彼女は、紫布を扱う商いをしていた働く女性であり、自分の家を、人が集い、支え合う場所として開いていた人でした。
House of Lydia
House of Lydia という名前には、
「大きく成功すること」や「目立つこと」ではなく、
- 誠実に働くこと
- 与えられているものを分かち合うこと
- 人が安心して関われる“場所”であること
そんな在り方を、会社として大切にしていきたい、という願いを込めています。
G3sewingは、これまで家族で続けてきた小さな営みです。
形は変わっても、
人の顔が見える仕事、
無理のないペース、
暮らしにそっと寄り添うものづくり、
その軸は変わりません。
2026年から、会社としては 株式会社House of Lydia になりますが、
「G3sewing」という名前と、ものづくりの姿勢は、これからも変わりません。
この名前で積み重ねてきた時間と信頼を、大切に抱えたまま進んでいきます。
そして、いつもG3sewingを選んでくださっているあなたへ。
新作が頻繁に出るわけでもなく、
大量に作れるわけでもないこの小さな会社が、
ここまで続いてこられたのは、
変わらず待っていてくださる方がいるからです。
G3sewingの商品を選んでくださること、
応援してくださることは、この小さな会社が「無理のない形で続いていく」ための力になっています。
G3sewingの商品を使い続けてくださること、気にかけてくださることそのものが、この会社の「無理のない経営」を支えてくれています。
2026年も、急がず、背伸びせず、その時々にできる最善を選びながら、家族と、そしてこの仕事と向き合っていきます。
今年一年、本当にありがとうございました。
来年も、どうぞG3sewingを見守っていただけたら嬉しいです。

— G3sewing —













